データの境界

なんちゃって理系がデータ分析業界に入ってからの汗と涙の記録。

Webサービスにも存在する「不気味の谷」

この前、会社の研究開発部の方がおもしろい話をしていたので紹介したい。

 

ネタとしてはフレッシュではないが、Goolgeが提供するGmailにおいて、ディープラーニングによる"返信分のサジェスト"をサービスに加えようとしている話。詳細やサービスのイメージなどは以下のリンク参照。

www.wired.com

 

Gmailに来たメールに返信しようとする時、以下の画像のように短い返信文が3つほど提案されてクイックに返信できるようになっているらしい。

http://www.wired.com/wp-content/uploads/2015/11/SmartReply_A_personal_01-576x1024.jpg

残念なことに、日本のメール文化においては

「お疲れ様です。◯◯です。」

「お忙しいところ申し訳ありませんが、〜」

「どうぞ宜しくお願い致します。」

「とりいそぎ、御連絡させあげました」

のような形式美というかお作法を、「了解しました」という6文字の内容を送るだけでもメール分に含めないといけないルールになっているので、正直「了解しました」だけを返信文としてサジェストされても実用に耐えないわけだが。(余談だが、そんな不可能を上手く実現したのがLINEのスタンプだと思う)

 

そんな日本はほっとくとして、本国アメリカではこういったサジェストも便利なものかもしれない。しかし困ったことが起こってしまったらしい。

メールのテキスト文をディープラーニングで学習しアウトプットさせてみると、返信文のサジェストにやたらめったら"I love you"という文が登場してしまったらしい。

これはバグではなく、単純にメールの返信文として"I love you"と返している人が多いから、そういった返信文も一般的であり適切だと判断されて仕方なくサジェストに登場するらしい。

しかし、普通の人間心理として『機械にサジェストされた"I love you"を返信文として送るというのもどうよ?』、とアメリカ人も思ったらしい。それを機械にさせられるのは気持ち悪いと。「よろ」と打つと「宜しくお願い致します」と補完するように単語登録している人が使う「宜しくお願い致します」に全く気持ちがこもってない、というのと似た心理かもしれない。

「メール返信サジェスト」は便利な機能っぽいが、まだまだ「人間の気持ち」と「機械の動き」には乖離があるみたいだ。

 

余談だが、先日SNSでとある投稿を見かけた。

その人は"手書きの"手紙を友達からもらってたいそう感動していた。

その理由を「手紙を書くのにかけられた時間も感じることが出来て嬉しいから」としていた。この気持きがテクノロジーの発達した未来でも同じく感じられるかはまだわからないが、おそらく人間は自分に目に見える形でコストを払ってもらえることに喜びを感じる生き物なんだろうと思う。自分が相手にとってコストを払うだけの価値がある、そのへんのどうでもいいヒトたちと自分は違うのだと感じられることが嬉しいのだと思う。だから「手書きの手紙」もまだまだ存在する。(これはあまりにもネガティブな意見だろうか?)

それでもこの話は、「機械がサジェストする"I love you"を使うのはなんか違う」と感じる気持ちと根っこの部分は同じアイデアだと思うのです